スピッツの音と詩

ファースト・アルバム「スピッツ」(POCH-1080)[91/3/25]

「スピッツ」はとにかく大すきなアルバム。全体的にただよう「ノスタルジックな世界」がわたしを、自分の記憶の中の「昔」ではなく「イメージ」としての「昔っぽさ」に引き込んでいく感じがたまらない。

ニノウデの世界(4:30)

漢字で「二の腕」と書くとすごく強そうな腕って感じがするけど、カタカナで「ニノウデ」と書くとやさしい感じがする。「寂しく意地悪な昨日」いったいなにがあったの?FM802では、この曲を当時ヘビーローテーションに選んでいたとか。すごいぞ802。

♪ぼーっとしてたら何故 固まった  (「何故か、だまった」と空耳)
♪タンタタターン 石の僕は空を切り取った (歌詞カードは「タンタンタン」)

海とピンク(3:38)

初期のスピッツの曲にたくさん見られる抽象的詩の世界の中でも、特に色濃くその特徴が出ている曲じゃないかな。「プラスチックでがっかり」とか「がんばって嘘つき」とか一聴したところでは「ふにゃ?」ってなフレーズも、この曲を通して聴くと、なにか伝わってくるものがある。最後が「あくびして」で終わっているのがなんかスピッツらしいよー。

♪プラスチックでがっかり 言葉だけ無邪気になる ほらまただまされてた
♪がんばって嘘つきで それでいてまじめな告白に ちょっと君を見て 海を見て あくびして

ビー玉(4:42)

この曲はアルバムを買う前にシングルのカップリングとして知った。「ヒバリのこころ」とは対照的なので驚いたおぼえがある。「ニノウデの世界」の「タンタン」といい、この曲の印象的なイントロの「やんやん」&サビの「チィパチィパ」といい、耳にすごく心地いいのはなぜ?

♪空色のナイフを手に持って 真赤な血の海をとび越えて来たんだよ

五千光年の夢(2:42)

リズムがすき。ひねくれた「うしろ向きのままで」とか「ゆがんだ天国」とかいう言葉が、「なんだか寂しいな」とか「ちょっと照れくさくて」とかいうき気持ちがこのリズムにのって出てくる、それだけでスピッツ。とくにすきなフレーズは「すべてが嘘だったとわかった お弁当持ってくれば良かった」と「頭ガイコツの裂け目から飛び出してみよう」2分42秒というすっきりした短さもいいね。「テレビ」と共にこの曲のイントロは秀逸。

♪ゆがんだ天国の外にいて ずるい気持ちが残ってるから

月に帰る(4:26)

別れのうた。さみしい。涙が出そうだけど、がんばってこらえるの。以前、この曲を使って映画を撮ろうとしていたけど、いろいろあって撮れなかった。ストーリーは事情があって田舎を出た少女が6年ぶりに帰郷するという、言ってみればありふれた話。でもスピッツの曲はすごい演出力があるからいい映画がとれると思った。はて「真赤な月」と「黄色い月」はどうちがうのかな。

♪ほどけた 裸の糸で  ♪今日の日 綺麗に過ぎていく

テレビ(4:08)

かなりすきな曲の一つ。テレビっ子だったし。これもかなり抽象的だけど、メロディが最高でやっぱりそこんとこの調和はとれてるなぁと思う。しょっぱなから「君のベロの上に寝そべって 世界で最後のテレビを見てた」っていうのが!3番の歌詞もすき。「おなかの大きなママ」ってことは弟か妹がうまれてくるの? なんか生命の不思議ってやつ?

♪不思議な名前も似合ってるね 失くさないで ずっと
♪カボチャとナスは仲良しか それもいいや だって

タンポポ(5:08)

スピッツにはめずらしい、(というかこの曲だけなのかな)3拍子のリズム。シンプルな音がいいな。「くるくる回るくる回る 空も大地も」広がる世界の大きさに驚いた子どもみたいな気持ちになる。アコーステックだね。

♪真っ赤なセロファンごしに見た秘密の庭を 今も思い出してるよ
♪何かが解かっても何も変わらない 立ったまま心はしゃがみこんで泣いていた

死神の岬へ(3:44)

 これまたすばらしいリズム。ずんちゃずんちゃ。後半の「二人」が見たもの。「風に揺れる稲穂」「朽ち果てた廃屋」「歳老いたノラ犬」「ガードレールの傷」「消えていく街灯」「いくつもの抜け道」どれもこれもノスタルジックだ。

♪ひやかすつもりはないけど にやけた顔で蹴散らした
死神が遊ぶ岬で やせこけた鳥達に会おうか

トンビ飛べなかった(3:31)

メロディは明るいのに、歌詞の内容はさみしい。「枕の下に隠れてる君」をさがして飛び立とう。「やっと世界が喋った そんな気がしたけどまた同じ景色」というのはとくに淋しいフレーズだ。「怠惰な命」いつも自分がそんな命な気がしてすごく淋しかった。

♪独りぼっちになった 寂しい夜 大安売り
ちょっとたたいて なおった でもすぐに壊れた僕の送信機

夏の魔物(3:10)

暑い夏はあんまりすきじゃないけれど、この曲の中の「夏の風景」というものにとてもあこがれる。まず、「古いアパートのべランダ」というのがとてもとてもノスタルジックなのだ。「なまぬるい風」これは夏の夕方の風景なのだとわかる。わたしの頭の中に、イメージとしての夏の世界が広がり、それはスピッツであるからこそ出せる世界なのだなぁ、と実感する。すきなフレーズは1番も2番も同じ部分で「折れそうな手でヨロヨロしてさ 追われるように」と「ぬれたクモの巣が光ってた 泣いてるみたいに」というところ。二人乗りしている。折れそうな手というのは女の子が運転してるからなのか、「僕」は後ろに乗ってるのか。

♪幼いだけの密かな 掟の上で君と見た 夏の魔物に会いたかった

うめぼし(3:36)

涙が出るほど、うめぼしがたべたい。涙が出るほど、君に会いたい。「値札のついたこころ」じゃ君に会えない?「枠からハミ出せない」僕だけど、涙が出るほど君に会いたい。心にしみ込んでくるのは、うめぼしのしょっぱい味とマサムネくんの声。

♪知らない間に僕も悪者になってた 優しい言葉だけじゃ物足りない あ〜あ〜あ〜

ヒバリのこころ(4:51)

スピッツがデビューした当時にはじめて聴いたと思う。変わったバンドだなと思っただけでさほど気にも止めていなかった。タイトルもなぜか「ヒバリのころ」だと思い込んでいたし。その頃聴いたことがあったのは1番だけで、2番以降はシングルを買うまで、聴いたことがなかった。「顔中」を「青汁」とか典型的な聴き間違いもしていた。前向きな歌がすきです。

♪目をつぶるだけで遠くへ行けたらいいのに
僕らこれから強く生きていこう 行く手を阻む壁がいくつあっても

(2 Jan. 1999 komako)
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