スピッツの刺激

その4:「花鳥風月」とベストアルバムに思うこと

「花鳥風月」・・・このアルバムをベスト盤と呼んでもいいのかな。レコード会社は「スペシャル編集アルバム」と呼びたいらしい。そういう呼び方は今まで聞いたことないから新鮮な感じでわたしはすき。でも世間は「ベスト」と呼ぶだろうよ。なんでも括るのがお好きだから。(といいつつわたしも括りにかかるのだが)

それにしても昨年は「ベスト盤」ラッシュの年でしたな。自らどう名乗っているのかは知らないけど、メディアはそろって「ベスト、ベスト」と連呼している。某有名アーティストの2枚でセールスが1000万枚を超えたアルバムなどは明らかに売れることを狙ったベスト盤だったと思う。それが悪いとは思っていないけど、あくまでベストなのだ。それを聴いてそのアーティストをわかった、と言うことなんてないだろう。言えないだろう。本当のファンはそのアルバムをどう受け止めたのか。

スピッツの「スペシャル編集アルバム」(ちょっと長たらしいか?)はどうだろう。わたしはどう受け止める?「アルバム未収録のB面(カップリング)集」「インディーズ時代の曲」「他アーティストへの提供曲」をそれぞれ収めたアルバム。インディーズ時代の曲、というのは『ヒバリのこころ』がとても貴重なアルバムになってしまった今、再版を望む声が高いのは確かだし、カップリング曲収録アルバム、というのもシングルを買わないファンにとっては待ち遠しいものだっただろう。つまり、これはファンの要望で生まれたアルバムと言えるかもしれない。これは憶測だ。もしかしたらスピッツの意図はちがうところにあるのかもしれない。これは売れることを狙っているのか?意図はなんだ?(ファンに買ってもらいたいアルバム?それともファンを増やすためのアルバム?そんなのはどっちだっていい)わたしは確かな彼らの声が聞きたい(メディアに出てほしいの)。

アーティスト自身が企画、選曲したベストアルバム、それが本来あるべきもののはずなのに、なんだか昨年のベストアルバムラッシュにはそれがあまり感じられない。去年が特に多かったからよけいにそう感じるけれど、そういう感じは昔からあったのかもしれない。契約が切れるから、レコード会社を移籍するから、これっきりよ、の意味を込めてベスト盤を出すアーティストが多いと聞いた。わたしも一時期ベスト盤っていうものがなんであるのかわからなかったとき、そういうものなのかと考えて軽く扱っていた。

自分が今までやってきた音楽を振り返る意味で歴史を綴るベスト盤をつくる、というのはわからないでもない。でもそうやって振り返った時、次の段階へ成長していくものを感じられないと、全く意味のない振り返りに終わるのじゃないかな。それか全く同じようなことをくり返しやっている人がいたとしたら、歴史を綴るという意味のベストなんて出す意味がないのじゃないかと思ったりする。

スピッツや他のすきなアーティストがいわゆる「ベスト的」なアルバムを出した時、わたしはやっぱり複雑な気持ちになるだろう。これから先どうなるんだ??っていう不安があると思う。または、流行りに乗るなんてそんなのヤ!!という気持ちもあるのだろう。とくにスピッツなんて地味でマイペースにこつこつと好きなものをやってきたバンドがそういう流行りに流されていると考えると、すごく矛盾を感じちゃったりするし、逆に彼らが流行りに乗ってると考えている自分自身を、なんてこと考えるんだ!と怒りたくなったりもする。スピッツは地味にやっているがけしてファンを置き去りにしてはいない。ちゃんと耳を持ってる。ファンの求めているものに応えようとしている。そう思うとうれしくてしかたがない。はやーくこいこい3/25てなもんで、さっきまでうだうだ考えてたのがバカらしい。とにかくついていくしかないと決めたんだろ、99epのことを聞いた時も。だから今もそうしよう。

んで結局何が言いたかったんだ?ベスト盤に賛成か反対かと言われれば、内容によってはありだと思う。なんにも考えてないものはなしよ、なし。ベストを出すときも、ふつうのアルバムを出す時のように、いっぱい考えてほしいから。これはどういう意味があって、だからこれを出すんだとかって。

ファンもさ、ぼおぉぉっとして、ただ単に与えられるものを聴いてるんじゃなくて、なんでベストなんだ?とか、この曲順はさぁとか、マニアックに考えてほしいな。ぼおぉぉっと聴いてると、ほんとなんでもよくなってくるから。いや強制する気はないんだけど、ひとつの意見としてね。

(14 Feb. 1999 komako)
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